第三種郵便物承認HSKあそぼうよ通巻26551号2009年9月13日発行

私的「生きる場センター」の歩み⑨

(沼田さとし)

◆ 「地域」での関係づくり
 ~「生きる場フェスティバル」(1986 ~ 1987 年)

 市場開放・円高による古紙の引き取り価格の暴 落は、いやがおうでも「生きる場センター」の運 営を逼迫していきました。一方で、廃品を出して くださる協力者は増え、車で回収に回れば回るほ どガソリン代などの必要経費はかさみ、たくさん 集めても大した売上げ金額にはならない。そんな 矛盾を抱えながら、回収に回る日々でした。しか し、協力者が増えていくことは、障害を持つ者が 当たり前に生きることが出来る「地域」を作って いっていると実感できることでした。
 そんな中、廃品回収に日頃協力してくださる 方々とより深く交流が出来ないだろうかと協力者 の方々に相談し、1986 年8月に「生きる場フェス ティバル」を実現することになったのです。
 富山小泉町キリスト教会の若い牧師さんは「ど うぞ、教会を使ってください」と快く場を提供し てくださいました。また、富山市寺町公民館でも その地域の方が働きかけてくださり、場を提供し ていただきました。
 さらに、日頃から廃品を出してくださっている 方々も、「バザーをやるのなら、これ使われ」と 使わないお皿やタオルや本や衣類などを出してく ださり、当日も参加して一緒に準備を手伝ってく ださいました。
 大阪からは、平井さんの友人の盲目のシンガー・ 町田茂雄さんらも駆けつけ、ミニコンサートを開 いてフェスティバルに花を添えてくれました。そ の時、メンバーの澤田千津子さんが作詞し、それ に町田さんが作曲し、「ふれあいをもとめて」と いう生きる場センターのテーマソングが出来上が りました。
 8月の暑い中、大きなイベントではなかったけ れど、障害者自身が考えて、呼びかけて、準備して、 動いたこのフェスティバルは大きな意味を持つも のでした。「地域」とつながっていこう! その思 いを再確認し、実感した2日間でした。この「生 きる場フェスティバル」は翌87 年8月にも場所 を代えて開催することになります。
 やりたいことがはっきりと見える時、周りはと ても関わりやすいのだと思います。自分に出来る ことは何かないかな…という思いが繋がっていく 人の輪が、実は作るべき「地域」なのではないか。 そんな思いを強くしました。
 廃品回収はそう簡単には辞められないな…。こ の関係を大切にしていきたいな…。そう思いなが ら、それでも他のことにも取り組んでいかなけれ ば「生きる場」を続けることは出来ないだろうと。  その頃から、以前、平井さんが印刷屋に勤めて いた経験を活かして、印刷やワープロサービスに 取り組み始めました。
 印刷機は、手で回す輪転機というもので、本当 に雑な印刷しかできません。ワープロもまだ出初 めで、1台20万円ぐらいしたのではないでしょ うか。到底、会で買えるものではありません。個 人で自腹で用意しました。
 お願いですから、一度印刷物を作らせてくださ いと頼んで歩いていたことを思い出します。
 また、もう一つは、運営費用に対して公的な補 助が受けられないものだろうかと模索していまし た。それは生きる場センター設立後に、補助金の ことを知り、富山市障害福祉課に問い合わせに 行ったことから、思わぬ方向に問題は展開して いったのです。           (つづく)


編集後記
 二一年度も残りわずかになり ました。この時期は卒業式など の時期、節目の時期です。
 私たちも、今年度のとらえ返 しをおこないながら、新しい年 度も、多くのみなさんとのふれ あいを求め、法人全体で模索し ながら、今後も制度的にも、社 会的にも困難ことがおきてきて も、決して諦めることなく、活 動をしていきたいと思います。            (跡治) 

編集人:自立生活支援センター富山
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