ケア会議開催とその経過について
<ケア会議を行うきっかけは主治医からだった。>
内容を書く前に、以下のことをお伝えしておきます。以下を踏まえて読んでください。
Aさんのもともとの入院先:X病院
1度目の手術の入院先:Y病院
2度目の手術の入院先:Z病院
Aさんは、1度目の手術を終え、X病院に戻りました。術後の経過や今後の動きなどに
ついてAさん、X病院の主治医、センターで何度か話しをする場をもってきました。その
中で、主治医に最初の段階から「退院が具体的に近づいた時に、関係者を集めて会議を開
きたいからその時はよろしく!」と言われていました。
しかし、なかなか症状は回復せず初めてのケア会議は退院にむけたものではなく、2度
目の手術に備えて、ということで進められることになったのです。
<第1回ケア会議参加メンバーとAさんとの関わり>
Aさん・・・・・・・・・・本人
Bさん・・・・・・・・・・Aさんのおじさん(入院の保証人及び手術の同意人)
ドクター・・・・・・・・・X病院主治医
看護士及び看護士長・・・・X病院担当看護士及び看護士長
ソーシャルワーカー・・・・X病院ソーシャルワーカー
行政・・・・・・・・・・・Aさん在住の市役所障害福祉課
(当センター支援事業の担当課)
支援事業コーディネーター・Aさんの就職支援を行っている
当センター・・・・・・・・Aさんのサポート及びAさんの関係者との調整役
<会議開催までのセンターの役割>
私たちは、以下のような役割でした。
・会議内容の提案(会議用のレジュメ作成)
・会議当日の進行
<会議開催までのソーシャルワーカーの役割>
会議を開くにあたり、ソーシャルワーカーさんには以下のような調整をされました。
・会議場所の確保(X病院の一室)
・Aさんに携わる病院関係者への呼びかけ
・会議開催の日時設定(病院関係者との日程調整を含めて)
<手術をする前に、家に一度帰りたい!>
事前の準備を経て、会議当日。Aさんと打ち合わせをしようと、予定時間より早めに病
院に行きました。そして、もう一度確認の意味で手術をするかどうか聞いたところ、Aさ
んから次のようなことを言われました。
「手術はするけど、その前に一度家に帰って、
いろいろ(気持ちの)整理したい。」
正直、びっくりしました。なぜなら、手術をするという前提での会議ということだった
ことと、Aさんは2度目の手術の話しが出た時から一貫して「治りたいから手術をする」
というスタンスでだったからです。
でも、今回の手術は命をかけた手術です。いろんな意味で整理したいというのは最もで
す。一度、手術すると決めたからって気持ちが揺らがない訳がありません。
ということで、「私らもサポートするから、今、言ってくれたその思いAさんから会議
の場でみんなに伝えてね。」と言って、会議に臨みました。
<会議の場で自分の思いを自分の言葉で伝える>
そして、会議は始まりました。参加者の自己紹介が終わり、手術に向けての話しになり
ました。そこで主治医は「手術するってことでいいんだよね?」とAさんに問い掛けまし
た。Aさんは、しばらく沈黙が続いてしまいました。
そこで、私たちは一言Aさんに声を掛けました。
センター:「Aさん、皆に伝えたいことあったんだよね?」
Aさん:「・・・・・・・」
センター:「大丈夫、言ってもいいよ。」
Aさん:「手術はするけど、その前に一度家に帰りたいんです。」
<思いの食い違い>
周りにいる人たちは、驚いた様子でした。
それと間もなくして、主治医からは「何で家に帰りたい?治したいんだろ?それなら少
しでも早く手術した方がいいんだよ。遅くなればなるほど、手術できなくなる。」と。
主治医の言葉に対してAさんは、
「いろいろ整理をしたい。最後に、友だちやお世話になった人たちに
会っておきたいから。」
と、目を真っ赤にして言ったのです。
主治医は、Aさんを責めているわけではありません。主治医、Aさんともに
“治りたい、治したいから手術をする”
という思いは、同じなのです。
何が違うのかと言えば、手術をするにあたる“過程”でした。
Aさん:「(命をかけて手術に望むのだから)家に帰って
気持ちの整理を」
主治医:「手術をするなら1日も早く!」
結論的には、Aさんの手術にかける強い思いを尊重し、手術にむけた話し合いから自宅
へ戻る話し合いをすることになりました。
その際、次回の会議までにケアプランの素案を作って関係者に目を通すところまでして
おくように、との指示が主治医からセンターにされました。
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