私的「生きる場センター」の歩み ⑧ (沼田さとし)
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◆「生きる場」づくりへ模索の1年(1985 ~ 1986 年)
1985 年2 月から始まった「生きる場センター」
ですが、何の仕事をするか、どういう取り組み
をしていくのか、日々模索の連続でした。
1年間平井さんが廃品回収で作ってきた関係 性をベースに、メンバーが増えたことによって 少しずつ回る場所も増えていきました。回収す るための車も平井さんの車に加えて、生きる場 センターとして中古の軽四バンを購入し稼働し はじめました。回収するものは古新聞・古雑誌・ 段ボールなどです。 とにかく、メンバーの会費で運営していたの で、何とか売上げを上げて運営費をひねりださ ねばならず、極力経費を掛けずに何でもできる ことに取り組みました。当然、メンバーへの給 料などあるわけもありませんでした。 廃品回収は、平井さんが行ってきた方法を引 き継ぎ、基本的に私たちの趣旨に賛同してくだ さるお得意様を回る形にしました。お得意様は ある程度の量の廃品が集まったら電話をしても らって回収に行きます。中には、定期的に回収 に行く場所も何カ所かありました。廃品の量が 多いとか少ないということではなく、共に生き ようとしてくれる方を大切にしていこうという 思いもあったと思います。 流しの廃品回収などはよく「チリガミ交換」 と呼ばれていたように、古新聞などを出すとち り紙やティッシュなどを渡していました。私た ちも、ただでもらうのではなく、何かティッシュ などを渡したらどうかということもありました が、結局、お得意様からは「別に要らない」「趣 旨に賛同して出しているのだから…」と逆に断 られました。 何を大切にしていくのか? 当然運営費も何と かしないといけないのですが、障害者が働く意 味は? そのことを通してどういう関係性を作っ ていくのか? そして障害者が生きていける地域 を作っていくための取り組みは?「生きる場セ ンター」はそのことを障害当事者が実践しなが ら模索していく場でもあったと言えます。 この時期、まだ古紙の引き取り価格は高く、 事務所の中が足の踏み場がないくらい廃品で いっぱいになると、木村商店さんに大きな車で 廃品を回収に来てもらいました。 また、回収したものの中からバザーなどで売 れそうな古本や雑誌などをより分け、毎月1回 富山市の護国神社で開かれている「青空蚤の市」 に出店して販売したりしました。毎月販売でき る場が出来たことで、使わなくなった食器や古 着など様々なものを回収するようになりました。 「蚤の市」は毎回たくさんの人でにぎわっていま した。重度の障害の人も売り子として活躍しま した。言葉があまり通じて無くてもそれなりに ちゃんと売り買いが成り立っていたり、声を掛 け合ったり、当然嫌な顔をして通り過ぎていく 人もありましたが、障害者が街の中にほとんど 出ていなかった頃に、直接いろんな人々と普通 に関わり合うことはどんなに大事なことなのか を実感しました。 メンバーの会費と僅かの売上げだけでよく1 年間持ったものだなと思いますが、何とか1年 間無我夢中で走ってきたように思います。 そんな中、社会情勢は市場開放・円高が急速 に進み、その荒波は古紙の価格にも大きな影響 を及ぼし始めました。古紙の引き取り価格が暴 落し始めたのです。 (つづく) |
◆編集後記
毎年年末になると一年間を振り返り
ます。作業所部門に関わる私としては、
生きる場センターで嬉しいことが、新
しいメンバーFくんが増えて新しい風
が吹いたこと。悲しいことは、生きる
場の初期に苦楽を共にした大切なメン
バーKさんが亡くなったこと。昔の資
料をひもといていると、Kさんの書か
れた詩などがありました。「わが道が
ある/わが生命がある/わがながれる
血がある/わが生命のかなしさよ/わ
が生命の別れがくる/わが人生のきび
しさよ」どれだけのきびしい道を生き
て来たのか…首が痛いと言いながら豪
快な笑い方をして周囲を明るくしてく
れたKさんの生き方を私はずっと忘れ
ません。(沼田記)
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