第三者からのコメント
関西学院大学教授
大谷 強
さん
この間の取り組みについて、大谷さんのホームページにてわかりやすくご紹介して頂いていました。
ということで、この報告の最後に第三者からみて私たちのこの間の取り組みをどう感じられたのかについて書いていただきました。
CIL富山の機関誌「遊ぼうよ」の編集担当者から、この間、連載されてきたAさんの事例についてコメントを書くように依頼がありました。私は遠くにいますから、この事例についても、機関誌を通して読ませていただいただけです。ですから、的確なコメントはできないでしょう。
しかも、機関誌の記事は、本当によく整理された冷静な記述になっています。実際には、戸惑いや時には声を荒げるようなやり取りがあったことでしょう。スムーズに進まないのが、現実でしょう。また、一つの問題が解決したと思ったら、次々と難問が生じて、アタフタと対応されたことでしょう。どんな問題群があるかは、前もっては分からないので、後追いになるのは、仕方ないでしょう。でも、どんなときにでも、本人の意向を尊重しようとされた点は、高く評価できます。支援者には柔軟な思考が大切だと、この記事を読んで、よく分かりました。
なお、この記事はCIL富山のスタッフである支援者が書いています。Aさんご本人や関係者の立場からは、もっと別の見方ができるはずです。
CIL富山のスタッフとしても、1人の人の悩みや困っていることにずっとかかわって、アドバイスしたり、問題解決への道筋を拓いて行きたいという気持ちがあるでしょう。そのことが相談に訪れた人の信頼感を増すことにつながると思います。同時に、CIL富山は、地域で生活している多くの人たちの共有財産でもあり、より多くの方々に役にたつ仕事をする必要性もあります。1人の生活問題にだけ、かかわりきることは、難しい。多分スタッフたちは、こうした矛盾に身を引き裂かれるような思いをしたことでしょう。
ご本人であるAさんも、もっと私のことに関わって欲しいという気持ちと、いや自分でできることは自分でやっていかなければ、と、両方の思いがあったはずです。その中で、CIL富山がとった姿勢は、一貫していたように思います。NPO「もやい」の湯浅誠さんが指摘されていたように思います。間違って理解していたら、ごめんなさい。どこかで本人が自分で対応するときが場面に直面するのだから、本人が自分の力をつける支援が大切だということでしょう。本人が人間関係をもう一度つなぎ合わせるような支援だと思います。それが、ご本人が同じような問題にぶつかったときに、有効な解決力につながるのでしょう。
たしかに発端はAさんの事例ですが、こうして記録に残すことは、質は違っても悩みを抱えた人への対応の仕方について、皆が使える財産、蓄積ができたことという意味合いもあります。先ほど述べた、ひとり一人の課題に真剣に直面しながら、地域の多くの人々の共有財産でもあるという矛盾に対する一つの回答でしょう。相談において、共有財産を活用するとき、個々の人が抱えている課題をじっくりと探すことと、関係する自治体によって制度や仕組みが異なっている場合があることに留意することが必要でしょう。
記事を読ませていただいての簡単な感想です。こんなことは、もう、すでに皆さんにはお分かりのことばかりでしょう。