センターとしての総括:①脳性麻痺の二次障害に対する認識と医療について
(1)二次障害に対する認識の問題
<いつものこと?それとも二次障害?>
№29,30合併版でも少し触れていますが、Aさんは昨年の夏頃からよく転倒されるようになりました。しかし、私たちは転倒はよくあることだし、その時はちょっと疲れていたのかもしれないね、という感じでした。二次障害かな、という思いも少しはありましたが、普段からよく転んだりしてケガをしていて、その都度いろんな病院に入院又は診療に行っても、医師から「どうもない」と言われてきたことに、私たち自身もどこか安心していた面がありました。また、Aさんからも身体の症状に関する関する相談はありませんでした。

<悪化するAさんの症状。二次障害に対する甘さ>
 しかし、日を経つごとに転倒する回数が増え、自力歩行も厳しい状態になってきていました。この時にはまだ車の運転をしていたのですが、“このあいだ、左折するときにうまく曲がりきれずに擦ってしまった”という話しを聞くようにもなりました。
『それは、二次障害じゃないの??運転控えたほうがいいんじゃない?』
とは言っていました。Aさんは車の免許を持ってはいたものの20数年間運転することはありませんでした。地域での生活を始めたことをきっかけに運転再開を決意され、自動車学校で車を持ち込んでの練習もされました。とは言え、初心者同然。初心者であれば、乗り始めは多少事故ったりはするしなぁ…と思うところもありました。

<二次障害って思いたくない!!>
 誰でも二次障害になりたくないし、そんな状態になっていっていると考えたくない。私たちも、そんな気持ちが働いていたような気がします。
 私たち自身が、二次障害は個々人によって出方や進行の仕方に違いがあることの認識を持っていなかったことや、障害者個々人・障害のとらえ方の違いによって、その事態が体調の悪さなのか二次障害の進行なのかということがはっきりわからなかったことがあると思いました。
さらには、二次障害について一般に社会的な認識がないのも事実だと思います。このことが、ケガをしていろんな病院に行っても二次障害を見つけられなかったことにつながっています。


(2)二次障害に対する医療現場と当事者の認識
<二次障害を知らない医療現場>
病院に行って、しびれや痛みを訴えても相手にしてもらえないという話しは今でも多く聞く話しとしてあります。二次障害を、どこの整形外科に行っても知っているわけではないことや二次障害があるという認識もされていない現状ではないでしょうか。
 私事ですが、ある整形外科に行った時の話しです。私の歩き方に対して、医師が言いました。

 医師:「その足はどうしてなの?」
  私:「脳性麻痺ですけど。」
 医師:「脳性麻痺?そんなのいっそのこと金具で固定してしまえばいいんだよ。」

<又聞き・うわさ話がすべてかのように>
障害者側も、二次障害を知らない人の方が多いです。知っていても、“二次障害”という言葉だけだったり又聞きで知っているだけで、「手術を勧められるだけだよ」とか、「○○さんは、手術をしたけどよくならなかったみたいだよ。」という話しがうわさ話のようにされているだけのようなところがあります。確かに、他の人の話しも参考意見として取り入れることは大切です。しかし、その話しを聞いたうえで、『それでは、自分の状態はどうなのか?』といった見方をすることが少なかったように思います。

<二次障害の詳細を知らせること。知ろうとすること>
医療的にどのような治療や手術があるのか、頸椎がどうなっていくからどのような症状が出てくるのか、またそのための治療として何があるのかについて伝えられてこなかったこともあげられます。
 私たち障害者自身も、二次障害の出方や進行の仕方についても個人差があることと、医療的にいろんな治療方法があることを正しく認識することだと思いました。