脳性麻痺の二次障害を考える2
~身内のいない人が入院・手術を行う場合に伴う課題~

<今回の掲載内容について>

今回は、前回の機関誌で出していた課題の続き

*課題②入院中のAさんの洗濯を誰がするのか。
*課題③手術中の財産管理を誰がするのか。

について、お伝えしていきたいと思います。

課題②入院中のAさんの洗濯を誰がするのか。

 入院をすると、どうしても必要になってくる「洗濯」。誰がするの?という問題
にぶつかります。
・病院にコインランドリーがあるんだから、
          そこでしたらいいのでは。
・洗濯の業者さんに頼んではどうだろうか。
などいろいろ考えました。
 しかし、結論的には、

ローテーションを組んで各自持ち帰って洗濯をする

という形をとりました。ローテーションの調整はセンターで行い、ローテーション
表をメンバーに渡します。週2回水曜と土曜ということで曜日を決めています。
曜日を決めたのは、ある程度目安を決めておいたほうがぶつからなくていいからで
す。その時の都合によって、前後したり順番を入れ替えたりして対応しています。
 業者さんに頼むのでもよかったのですが、Aさんには身内の方がいらっしゃらな
いので、週2回必ず誰かが顔を出すことができるという意味でもローテーションを
組んで行う方法をとりました。
 1度目の手術の時のローテーションメンバーは、センタースタッフ4人とAさん
の就職支援で関わって頂いている支援センターのコーディネーターさんの5人で行
いました。2度目の手術は、県外での手術だったため、どうしようかと思っていた
のです。しかし、「人と人のつながり」で解決しました。
 Aさんは、以前サッカーをされていたのですが、2度目の手術の入院先のところ
にサッカー仲間が住んでおられたことで、週何度か足を運んで頂き洗濯をしていた
だくことができました。また、センターのボランティアとして関わってくれていた
人が「入院先が○市なら、私の知り合いもできるかもしれない」ということで新し
い人を紹介してくださったりしたことで乗り切ることができました。
 2度目の手術が終わり、再び富山の病院に戻ってからは以前のメンバーからさら
に2度目の手術の同意人をしてくださったCさんも加わり、現在は6人でローテー
ションを組んで行っています。
 ちなみに、病院にはコインランドリーはあるのでわざわざ持ち帰らなくても?と
いう考えがあります。それは、コインランドリーの場合、洗濯をしてから乾燥が終
わるまでとなるとかなりの時間がかかるので、乾燥が終わるまでの長時間病院にい
るのが難しいということで持ち帰っています。


課題③入院中のAさんの財産管理を誰がするのか。

 Aさん自身は、ご自分で財産管理できる方です。
 それでは、なぜこのような課題が挙げられるのか?ということですが、Aさんは
昨年の12月から現在に至るまでの10ヶ月近く入院生活を送っています。(途中
約1ヶ月間は自宅に戻りましたが。)これだけ長い間、家を空けるとなると自宅に
保管しておくというのも不安です。それでは、病室に置いておけばとも思います。
 しかし、病院によっては鍵のついてない引き出しのところもあります。手術をす
れば、麻酔をすることもあり一時的ではあれ、自分で貴重品等の管理をすることは
難しくなります。ということでどうしたらいいのかを考え、下記の案がでました。

①センターが管理する
②成年後見制度を活用する
③地域福祉権利擁護事業を活用する
④病院に管理をお願いする

 ①について:トラブルを回避するためと、一方にのみ責任が偏らないようにする
  意味でセンターとしてはやらない方法を考えようということにした。
 ②について:判断能力が不十分な方が対象ということで、活用することができな
  かった。また、緊急な場合には対応できない。
 ③について:判断能力が不十分な方が対象ということで、活用することができな
  かった。また、緊急な場合には対応できない。
 ④について:病室にあるカードキー式の引き出しでの管理をお願いしたいとのこ
  とだった。それ以外は、できないとのこと。(カードキー式のある病院の場合
  とのことだったので、カードキー式の引き出しのない病院に対しては、無理だ
  ろうという判断で聞かなかった。)

 以上のような結果でした。
 困り果てた中、ひとつの案が思いつきました。それは、

銀行の貸し金庫を借りる

 です。ダメもとで聞いてみようということで、Aさんの取引先の銀行に電話をし
ました。銀行さんとしても、初めてのケースで数日間協議をされた結果OKの返事
をいただきました。以下のような形です。

Aさん名義で貸し金庫を借りる。
代理人をおき、金庫の中の物を取り出す役割
(貸し金庫の場所が狭く、車椅子で入れない為)

貸し金庫の鍵は、代理人ではない別の人が保管する。
利用料は、月額1050円(税込)

 この時、本人・代理人・鍵保管人の3者で文書を取り交わし、各自文書を保管し
ています。貸し金庫に預ける物は、ひとつの封筒にまとめて入れて封をして上下に
割印を押します。貸し金庫の鍵も同様に封をし、印を押した物を別の人が保管して
います。

貸し金庫について(Aさんの取引先銀行のお話し)

・利用料は借りる期間に関係なく、年間契約であること。
 (月1050円×12ヶ月)
 (今回は、事情を説明し、交渉をして月単位での利用を
  承諾頂きました。)
・代理人をつける場合は、家族であること
 (今回は、事情を説明し、交渉をして家族以外の人でも
  よいとの承諾頂きました。)
・鍵をなくした場合は、実費必要

不足している点があるかも知れませんが、ご了承願います

あくまでも一銀行のお話なので、詳細をお知りになりたい
方はご利用の銀行等でご確認ください。
<死亡危急者遺言書>・・・前回の機関紙の中で紹介しましたが、これを作るにあ たりAさんは文字が書けなかったので、口答で聞き取りながら証人が口実筆記しま した。そのときのことをビデオ撮りして、本人の意思であることを記録に残しまし た。また9月下旬に家裁に証人全員が呼び出され、書類の確認が行われました。そ の間の時間は、2~3分で終わりました。この後、審査があり1ヵ月後に通知され るそうです。Aさんの現況は、順調に回復してきています。